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カーボンニュートラル

 2011年3月以来日本国内の原子力発電所はすべて停止し、再生可能エネルギーを利用した発電の可能性が多方面で検討されています。農産物、木材などを燃焼させた熱で発電するバイオマス発電もそれらの一つです。

バイオマス発電 バイオマス発電のために農産物、木材などを燃やすと当然 CO2 が発生しますが、農産物、木材などは成長する段階で大気中から CO2 を吸収しているので、結局大気中の CO2 は発電によって増加することはありません。

もし林業廃棄物、農業廃棄物などを燃やすことで発電できれば、現在日本の経常赤字の原因になっている化石燃料の輸入の削減につながります。

これまでもエネルギー危機が起こるたびに、日本ではさまざまなタイプのバイオマス発電の可能性が検討されてきました。

しかし、現実にはバイオマス発電はさまざまな問題点があり、各地で発足したプロジェクトもなかなか進展しなかったり、不採算で立ち消えになったりというのが多いようです。
まずは日本におけるバイオマス発電の現状を調査し、その問題点を個別に検討しましょう。

スウェーデンの場合

 バイオマスの利用については、海外では近年北欧諸国で意欲的な取り組みがされています。スウェーデンは国土面積・森林率が日本と大略同じですが、既にエネルギー供給の3割は森林資源によってまかなわれているだそうです。
同国では温室効果ガスを2020年に1990年比40パーセント(2000万CO2トン)削減し、エネルギーの5割を再生可能エネルギーでまかなう計画を立てたということです。

ここで注意しなければならないのは、日本とスウェーデンでは「国内で消費されるエネルギー」なるものの構成がかなり異なることです。
北極圏の少し手前に位置するスウェーデンでは、冬季には十分な暖房が不可欠です。いっぽう温帯に位置する日本では、冬季の暖房も必要ではありますが、なによりも夏季の冷房に使う電力をいかに手当てするかが大問題です。

スウェーデンの国土面積は前記のように日本と同じくらいですが、同国の人口はというとなんと1000万人にも届きません。日本の人口の1/11ほどしかないのです。
また、スウェーデンではGDPに占める工業生産額の比率が日本ほど大きくありません。

以上から、スウェーデンでは「国内で消費されるエネルギー」のうち暖房用の熱エネルギーの比率が比較的に高いが、日本では工業生産や夏季の冷房に使う電力の比率が大きく電力をいかに生み出すかが最重要になっているのがわかります。

熱源としてのバイオマス

 バイオマスは、林業、農業などで生産された植物体を利用するので通常かなりの水分を含んでおり、燃料としては概して熱量があまり高くありません。石油や天然ガスのように簡単に高い燃焼熱を発生できるものではないのです。

蒸気タービンで発電機を回転させる発電方式では、発電の効率を上げるには蒸気を高温にして圧力を高める必要があります。この点で、熱量の低いバイオマスによる発電は石油や天然ガスを熱源にする発電より原理的に不利となります。
特に生ゴミや食品廃棄物を主たる燃料にする場合には効率が非常に低く、石油/天然ガス火力発電所の効率が40パーセントに達するのに対し、生ゴミ発電では効率は10〜15パーセントにとどまるということです。

石炭火力発電は、もともと石油/天然ガス火力発電に比較して効率が低かったのですが、近年石炭微粉末をガス化炉で可燃ガス化し、それをガスタービンを使って発電する石炭ガス化発電方式が登場して効率が向上しました。

バイオマスにもそのような方式を適用することで燃焼温度が高くなり、効率のよい発電が可能になるということですが、実は後述のようにバイオマスの利用は原燃料物質調達の面から大型発電システムは難しいので、少なくとも現時点ではガス化炉や炭化炉を利用した高効率バイオマス発電はまだ一部で行われているだけです。

原燃料物質の確保

 私の郷里(千葉県)には広い里山があり、杉などが植林されたなだらかな斜面が連なっています。最近その里山を歩いたところ、杉林の中に間伐された細い幹がそのまま放置されているのをほうぼうで見かけました。間伐もされず、勢いのなくなった杉の細い木が倒れかかった状態で放置されているところもかなりありました。

また、水田地区では、秋、取入れが終了すると、稲わらやもみがらを水田に放置したり水田で焼却する光景をよく目にします。それら膨大な林産廃棄物、農産廃棄物を集めてバイオマス発電に利用したらどうだろうかと、私はいつも考えていました。

ところが、日本では現在までに林業廃棄物、農業廃棄物を原燃料として利用した大規模バイオマス発電というのはほとんど実現していません。インターネットに開設されている専門家のウェブサイトを訪ねると、その理由が次第に見えてきました。

まず第一に、未利用木材などの木質バイオマスは、基本的に発熱量が小さい原燃料です。北欧諸国のように主として熱源として利用するのならともかく、発電を主たる目的とするなら莫大な量を発電所に集荷する必要があります。
ところが山間の森林から間伐材などの未利用木材を搬出し、成形して発電所に持ち込むのは、かなりのコストがかかります。間伐材でも合板や製紙に利用できるものはまずまずの価格なので搬出・集荷コストを吸収できますが、バイオマス発電用では価格が安いのでそれらのコストを考えると採算が合わないとのことです。

製材所 未利用木材を利用したバイオマス発電でなんとか採算に乗せるには、専門家は「地域の森林業や製材業と連携して共同で小規模なバイオマス発電を行うべきだ」と述べています。

間伐材のある森林とバイオマス発電サイトが近ければ、原燃料の輸送コストが小さくて済みます。
またその地区の製材工場にバイオマス発電サイトを併設すれば、原木材を森林から搬入する貯木場、原木材を工場内で搬送するクレーンなどはかなり共用ができるでしょう。
製材工場から発生する廃木材なども、発電炉が近くにあるので簡単に投入できると考えられます。

前記の稲わら、もみがらなど農業廃棄物についても、事情は同様です。それらは未利用木材よりさらに発熱量が小さい物質で、バイオマス発電に使うには莫大な量を必要とします。
発生する熱量の割りに軽くて体積が大きいそれら農業廃棄物をバイオマス発電サイトに集荷するには、多数の輸送トラックと広大な貯蔵スペースが必要です。

農業廃棄物をバイオマス発電に使おうとすると、原燃料不足になる恐れが大きいという指摘もあります。たとえば稲わら、もみがらなど稲作から得られるバイオマス物質は一見かなり多量にあると思われていますが、実は世界的に見ればそれほどの量ではありません。
水田面積が狭くしかも単作栽培である日本の稲作廃棄物は、少なくとも大規模なバイオマス発電の原燃料としては量が十分ではないのです。

日本のバイオマス発電所

川崎バイオマス発電所  日本の大型バイオマス発電所の例として、2011年から操業している川崎バイオマス発電所について調べましょう。
川崎バイオマス発電所は川崎市の港湾地区にあり、東京・京浜地区から発生した建築廃材等の木質バイオマス燃料を利用して発電をしています。

発電出力は33,000kWで、日本国内のバイオマス専焼発電所としてはトップクラスです。
新鋭の原子力発電所が定格出力100万kWくらいなので、川崎バイオマス発電所の定格出力はその3.3パーセントほどとなります。小規模水力発電所に相当する発電規模です。

川崎バイオマス発電所の経営には、大手木質住宅メーカーの住友林業が参加しています。住友林業の工場から出た廃材、住宅立替の際の廃木材をはじめ、東京・京浜地区から発生した木材などを発電所に隣接する工場に搬入し、そこで発電所で燃焼するのに適した木質チップに加工します。

木質チップは発電所の燃焼炉に連続して投入され、その高熱でタービンを駆動して発電します。その熱効率は一般火力発電所並みの30数パーセントを達成しているとのことで、バイオマス専焼発電所としては優秀です。

燃料は上記のような木質バイオマスを年間に18万トン使用する計画になっていますが、どうやらそれだけ集めるのに苦労しているようで、川崎市その他からの廃街路樹や剪定枝なども利用しているということです。建築廃材などは今後人口減少に伴って次第に少なくなると予想されるので、ますます原燃料の集荷に苦労することになりそうです。
最近は、近くにある大手食品メーカーからの大豆しぼりかすや川崎市中央卸売市場で発生する木製パレットなども集荷して燃料として使っているそうです。

地方のバイオマス発電

 上記川崎バイオマス発電所は、大都市圏から発生する廃木材を主たる原燃料とする都市型大型バイオマス発電所ということができるでしょう。
最近のバイオマス発電所の調査を見ると、地方にはさらに大規模な木質バイオマス発電所が建設されているのがわかりました。

糸魚川バイオマス発電所 サミット明星パワー糸魚川バイオマス発電所は出力5万KWの大型バイオマス発電所で、2005年に新潟県糸魚川市のセメント工場に隣接するプラントで操業を開始しました。

発電燃料の7割程度は解体家屋等の木質系バイオマスで、残りは隣接するセメント工場から供給される石炭を使用しています。石炭は木質系バイオマスのカロリー調整の役割もしています。

大型発電施設ということで発電効率は35パーセントという高レベルを実現したそうです。発電所より排出される燃焼灰は隣接するセメント工場でセメント原料として利用されています。

神之池バイオマス発電所 神之池バイオマス発電所は出力2万1000KWの大型バイオマス発電所で、2008年に茨城県鹿島港の住宅用構造材工場に隣接するプラントで操業を開始しました。

発電燃料の木質バイオマス燃料は、全量隣接する中国木材鹿島工場から供給されます。そのため、原燃料が安定して確保できるのが強みです。

神之池バイオマス発電所は、電力以外にも高温の蒸気を中国木材鹿島工場をはじめ近隣工場に直接パイプラインをつないで販売しています。このように電力と熱エネルギーを同時に供給することで、バイオマス発電のメリットをフルに生かしています。

森林バイオマス発電

 このように、現在日本で操業している大型バイオマス発電所は、都市部からの廃木材や住宅用構造材工場から発生する端木材を原燃料とするものが多数を占めています。

前記のように、北欧諸国では広大な森林から発生する間伐材、倒木など未利用木材資源を利用した大型バイオマス発電所が多数操業しています。北欧諸国では今後さらにバイオマス発電の規模を拡大し、やがて原子力発電からの脱却を目指すとのことです。

グリーン発電会津 木質バイオマス発電所 左の写真は、福島県会津若松市にあるグリーン発電会津のバイオマス発電所です。
日本では今後木造家屋の減少が続くと考えられますが、その結果伐採をしても採算が合わないために放置される森林が増加しつつあります。

この発電所はそのような未利用森林資源を活用するために建設されたもので、原燃料のほとんどを間伐材など森林資源でまかなっています。

原燃料の水分が多いため、燃焼の効率を上げるため様々な工夫をしているとのことです。発電所の定格出力は5700KWで、小型水力発電所クラスの規模になります。

森林資源発電の今後

 上記のように未利用森林資源を主たる原燃料とするバイオマス発電所は、日本の森林資源を維持する上で重要であり、また発電所の原燃料を海外に頼らず国内資源でまかなうという点でも大変存在意義があります。しかし、現実にはこのタイプの大型バイオマス発電所は日本ではそれほど建設されていません。

その理由は、一口で言えば森林木材資源という水分が多く発熱量が低い原燃料を使って発電するには莫大な量を必要とするということです。
大規模な発電をするには一つの森林地区ではとても必要な量を確保できないので、近隣の森林からも森林木材資源を集めなければなりません。しかしそのような熱量あたりの重量、体積が大きな原燃料を遠方から多量に集荷するには大変な輸送コストがかかります。

バイオマス発電は新規参入を促す固定価格買取制度(FIT)の対象になっていますが、間伐材・主伐材など未利用森林資源を原燃料とする発電は、上記のように原燃料調達コストが高いのを考慮して現在32円/kWとかなり高い価格でで買取されます。

木材プロセッサ しかし、それでも未利用森林バイオマスを使った発電は少なくとも現時点では採算に合わないケースが多く、このタイプの大型バイオマス発電所は日本ではそれほど建設されていません。

森林バイオマス発電のコストを下げるには、まず森林での伐採・積み出しにかかわる作業を機械化し、能率を高める必要があります。
別ページで解説するように、森林での作業の機械化は北欧諸国や中欧オーストリアなどでは長い歴史があり、大いに実績を挙げています。
日本でも、最近は各地でプロセッサなどの森林作業機械が盛んに導入されつつあります。

木質ペレットの利用

 これまで述べたように、森林木材資源という水分が多く発熱量が低い原燃料を使って発電するには、森林での伐採・積み出しはもちろんのこと、それらをバイオマス発電所に集荷するのにも大きな輸送コストがかかります。
そのため、森林木材資源を利用するバイオマス発電所はできるだけ森林地区の近くに建設しなければならないという制約が生じます。

木質ペレット 「木質ペレット」は、製材副産物などを加熱・圧縮し、直径6mm〜9mm、長さ10mm〜25mmの円柱形に成形したものです(左の写真)。
加熱・圧縮により含有水分が減少し、単位重量あたりの発熱量が大きくなります。
また形状が輸送に適しているため、産地から遠く離れたバイオマス発電所でも比較的低い輸送コストで利用できるようになりました。

木質ペレットにはその原材料によってさまざまなグレードがありますが、一般的にバイオマス発電で利用する場合には単位発熱量あたりの価格は重油よりかなり低いとされます。

木質ペレットによる発電は、現在新規参入を促す固定価格買取制度(FIT)の対象になっています。その電力は、木質ペレット製造に利用する原材料によって変わりますが、大体現在は20円/kW程度とかなり高い価格で買取されます。

木質ペレット発電所

 昭和シェル石油は国内最大級のバイオマス発電所を川崎市港湾地区の自社敷地に建設中で、2015年12月には発電を開始する予定とのことです。
同亜発電所の出力は49MW(発電端)、想定年間発電量は30万MWh(3億kWh)であり、一般的家庭約8万3000世帯の年間消費量に相当します。
新規参入を促す固定価格買取制度(FIT)により、同亜発電所の1kWh当たりの売電単価は24円(税別)となります。

パームヤシ殻 昭和シェル石油は、この発電所では主たる燃料は上記の木質ペレットを利用し、そのほかに東南アジアから輸入するパームヤシ殻を使うとしています。

パームヤシ殻はヤシの実からパーム油を作った残りの殻部分(左の写真)で、バイオマス燃料素材としてはかなり熱量が高いので、近年発電燃料や石炭混焼用として盛んに利用されています。パームヤシ殻については別ページで詳しく解説します。

日本でも1980年代の前半から木質ペレットの生産が始まりましたが、大多数が木材工場などで兼営として小規模に行われており、その生産高はそれほど大きくありません。

近年欧州の火力発電所などで木質ペレットが大量に使われるようになったのに対応し、世界各国でのペレットの生産高は日本をはるかに上回るペースで増加しています。
アメリカ、カナダ、ロシア、ブラジルなどバイオマス資源大国では年産数十万トンの大規模なペレット工場が続々と建設されているということです。

日本で発電用燃料としての利用が本格化したのを見て、それら海外で生産された木質ペレットが大量に輸入されつつあります。輸入ペレットの平均価格はCIF(Cost, Insurance and Freight 運賃、保険料込みの価格)で現時点では20円/kgを下回ってきていますが、それに対して国産ペレットの価格は工場出荷時で25円/kg〜30円/kgが一般的だそうです。

上記昭和シェル石油の大型バイオマス発電所で使用が予定される木質ペレットは、副燃料であるパームヤシ殻と同じく海外からの輸入にたよることになると考えられます。
同発電所が川崎市港湾地区に建設されるのは、それら原燃料を海外から大量に輸入する際のコストを考えてのことでしょう。


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